第9章 運動器疾患
A.骨粗鬆症
1.骨粗鬆症の病態
【解 答】
1.骨粗鬆症は骨量の低下と骨組織の微小構造の破綻によって、小さな孔があたか
も軽石のように多数空き、骨強度が低下したために骨折危険率が増大する疾患
である。
2.骨粗鬆症は単一の疾患でなく、1)原発性骨粗鬆症と2)二次性骨粗鬆症に分
けられる。
1)原発性骨粗鬆症
原発性骨粗鬆症は、成長期以降にみられるものが圧倒的に多く、これを総称し
て退行期骨粗鬆症という。退行期骨粗鬆症はさらに1)閉経後骨粗鬆症と2)
老人性骨粗鬆症とに分けられる。
2)二次性骨粗鬆症
二次性骨粗鬆症を来す原因としては各種内分泌疾患、胃切除、ステロイド製剤
の服用など多数のものが知られている。
3.退行期の骨量
1)成長期に得た骨量とそれ以降の骨量減少速度ならびに年齢に依存するが、
卵巣機能の廃絶によるエストロゲンの欠落が骨量減少速度を加速する。この骨
量減少が生理的範囲を超えたものが閉経後骨粗鬆症である。
2)老人性骨粗鬆症は女性ではエストロゲン欠落による変化が落ち着いた60
〜65歳以降によくみられる。また男性でも70歳以降に骨粗鬆症の合併症(骨
折)罹患率が増加する。老年者の骨代謝は骨形成と同時に骨吸収も低下してお
り、低骨代謝の状態で骨量の減少が進む。
2.骨粗鬆症の特徴
【解 答】
1.看護
骨折するまで無症状のことが多い。大腿骨頸部骨折、椎体圧迫骨折がみられる。
また、橈骨遠位部骨折は転倒して手掌を突き、手関節の伸展を強制されたため
に生じる。これをコーレス骨折という。
2.検査と診断
二次性骨粗鬆症を除外し、腰椎エックス線による骨萎縮度判定。胸腰椎エック
ス線像による骨折判定や骨量計測〔二重エックス線吸収測定(DXA法)で骨
密度(骨塩量値)をみる〕で、正常、骨量減少、骨粗鬆症と判別する。骨量測
定は腰椎正面の測定が標準的で、椎体骨折があれば低骨量(骨密度値が若年成
人平均値の80%未満)で、椎体骨折がなければ、骨萎縮度1以上で低骨量(骨
密度値が若年成人平均値の70%未満)のものを原発性骨粗鬆症と診断する。
3.薬剤による治療
薬物治療としてカルシトニン剤、エストロゲン製剤、蛋白同化ステロイド製剤、
カルシトニン製剤、活性型ビタミンD3製剤、イブリフラボン製剤、ビタミン
K2製剤、ビスホスホート製剤を用いる。
4.食事療法
骨粗鬆症の食事療法ではカルシウムの摂取が重要である。しかし、カルシウム
の摂取だけでは、腸管での吸収量は必要量の30%程度といわれる。そこで、
カルシウムの吸収を促進するビタミンD・ビタミンK2、クエン酸などを含む
食品を同時に摂取できるよう援助する。
3.骨粗鬆症の看護
【解 答】
1.骨折防止が重要で、転倒しないように環境を整備する。
2.低骨量の危険因子として、次のようなものがある。
1)高齢、2)女性、3)家族歴、4)小体格、やせと低栄養、5)運動不足
(不動性)、6)喫煙や過量のアルコール、7)カルシウム摂取不足、ビタミ
ンD不足、ビタミンK不足、8)卵巣機能不全、9)無出産歴、10)副腎
皮質ステロイド薬の服用、11)胃切除例、12)諸種疾患合併症(甲状腺機
能亢進症、糖尿病、腎不全、肝不全など)
3.骨折の危険因子として、次のようなものがある。
1)低骨量、2)過去の骨折歴、3)高齢、4)やせ、5)高身長、6)認知
症や脳神経疾患の合併、7)運動機能障害や視力障害の合併、8)睡眠薬や血
圧降下薬の服用、9)骨吸収マーカーの高値が知られている。
骨粗鬆症の危険因子
1)個人的因子 1 性(女性) 2 年齢(高齢者、閉経期以降) 3 嗜好習慣(喫煙、飲酒) その他 2)栄養的因子 1 カルシウム摂取不足 2 カルシウム吸収能力の低下(老人) 3 ビタミンD摂取不足 その他 3)物理的因子 1 運動不足(日常活動レベルの低下、非運動習慣) 2 日光浴不足(戸外に出ない、照射時間の少地域) 4)病的因子 1 エストロゲン欠如(閉経期後、卵巣摘出後) 2 ステロイド長期投与 など |
4.骨折の予防
予防は低骨量や骨折の危険因子を明らかにし、予防可能な事項については早め
に対策をたてる。また適度な運動とバランスのよい食事を心がける。
1)運動療法としては、歩行が勧められる。
2)物理療法とは、鎮痛薬の使用を最小限にとどめる。
骨粗鬆症の予防
1)骨の状態を診る 1 骨の検診、骨塩量の測定 2 状態を知り早期発見、早期予防 その他 2)骨量減少の危険因子を除去する 1 カルシウム摂取を増やす 2 適度な運動 3 喫煙、過度の飲酒習慣の改善 4 日光浴 その他 3)転倒骨折の防止(前傾姿勢で歩行しないなど) 5)寝たきり防止 1 早期離床 2 長期臥床を避ける その他 |
5.大腿骨頸部骨折の予防
転倒機会の減少(体幹バランス・歩行能力の改善、杖・運動靴の使用)や衝撃
緩和の工夫(殿部プロテクターの使用)を心がける。食事療法では骨量維持(蛋
白質、カルシウム、マグネシウム、ビタミン類)と適正な体重をはかる。
設問9―4 骨粗鬆症患者のリハビリテーションについて述べよ |
【解 答】
骨粗鬆症のみでは機能障害はみられず、予防を目的とした歩行(朝夕30分、計8,000
歩程度)を行う。腰痛の発生時には硬いベッドで臥床させ、落ち着いた時点で腹筋
の筋力増強訓練を行う。骨折時には、その部位によって訓練方法を選択する。
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