第9章 運動器疾患
A.骨粗鬆症
1.骨粗鬆症の病態
設問9−1 骨粗鬆症の病態について述べよ |
【解 答】
1.骨粗鬆症は骨量の低下と骨組織の微小構造の破綻によって、小さな孔があたか
も軽石のように多数空き、骨強度が低下したために骨折危険率が増大する疾患
である。
2.骨粗鬆症は単一の疾患でなく、1)原発性骨粗鬆症と2)二次性骨粗鬆症に分
けられる。
1)原発性骨粗鬆症
原発性骨粗鬆症は、成長期以降にみられるものが圧倒的に多く、これを総称し
て退行期骨粗鬆症という。退行期骨粗鬆症はさらに1)閉経後骨粗鬆症と2)
老人性骨粗鬆症とに分けられる。
2)二次性骨粗鬆症
二次性骨粗鬆症を来す原因としては各種内分泌疾患、胃切除、ステロイド製剤
の服用など多数のものが知られている。
3.退行期の骨量
1)成長期に得た骨量とそれ以降の骨量減少速度ならびに年齢に依存するが、
卵巣機能の廃絶によるエストロゲンの欠落が骨量減少速度を加速する。この骨
量減少が生理的範囲を超えたものが閉経後骨粗鬆症である。
2)老人性骨粗鬆症は女性ではエストロゲン欠落による変化が落ち着いた60
〜65歳以降によくみられる。また男性でも70歳以降に骨粗鬆症の合併症(骨
折)罹患率が増加する。老年者の骨代謝は骨形成と同時に骨吸収も低下してお
り、低骨代謝の状態で骨量の減少が進む。
2.骨粗鬆症の特徴
設問9−2 骨粗鬆症の特徴について述べよ |
【解 答】
1.看護
骨折するまで無症状のことが多い。大腿骨頸部骨折、椎体圧迫骨折がみられる。
また、橈骨遠位部骨折は転倒して手掌を突き、手関節の伸展を強制されたため
に生じる。これをコーレス骨折という。
2.検査と診断
二次性骨粗鬆症を除外し、腰椎エックス線による骨萎縮度判定。胸腰椎エック
ス線像による骨折判定や骨量計測〔二重エックス線吸収測定(DXA法)で骨
密度(骨塩量値)をみる〕で、正常、骨量減少、骨粗鬆症と判別する。骨量測
定は腰椎正面の測定が標準的で、椎体骨折があれば低骨量(骨密度値が若年成
人平均値の80%未満)で、椎体骨折がなければ、骨萎縮度1以上で低骨量(骨
密度値が若年成人平均値の70%未満)のものを原発性骨粗鬆症と診断する。
3.薬剤による治療
薬物治療としてカルシトニン剤、エストロゲン製剤、蛋白同化ステロイド製剤、
カルシトニン製剤、活性型ビタミンD3製剤、イブリフラボン製剤、ビタミン
K2製剤、ビスホスホート製剤を用いる。
4.食事療法
骨粗鬆症の食事療法ではカルシウムの摂取が重要である。しかし、カルシウム
の摂取だけでは、腸管での吸収量は必要量の30%程度といわれる。そこで、
カルシウムの吸収を促進するビタミンD・ビタミンK2、クエン酸などを含む
食品を同時に摂取できるよう援助する。
3.骨粗鬆症の看護
設問9−3 骨粗鬆症の看護について述べよ |
【解 答】
1.骨折防止が重要で、転倒しないように環境を整備する。
2.低骨量の危険因子として、次のようなものがある。
1)高齢、2)女性、3)家族歴、4)小体格、やせと低栄養、5)運動不足
(不動性)、6)喫煙や過量のアルコール、7)カルシウム摂取不足、ビタミ
ンD不足、ビタミンK不足、8)卵巣機能不全、9)無出産歴、10)副腎
皮質ステロイド薬の服用、11)胃切除例、12)諸種疾患合併症(甲状腺機
能亢進症、糖尿病、腎不全、肝不全など)
3.骨折の危険因子として、次のようなものがある。
1)低骨量、2)過去の骨折歴、3)高齢、4)やせ、5)高身長、6)認知
症や脳神経疾患の合併、7)運動機能障害や視力障害の合併、8)睡眠薬や血
圧降下薬の服用、9)骨吸収マーカーの高値が知られている。
骨粗鬆症の危険因子
1)個人的因子 1 性(女性) 2 年齢(高齢者、閉経期以降) 3 嗜好習慣(喫煙、飲酒) その他 2)栄養的因子 1 カルシウム摂取不足 2 カルシウム吸収能力の低下(老人) 3 ビタミンD摂取不足 その他 3)物理的因子 1 運動不足(日常活動レベルの低下、非運動習慣) 2 日光浴不足(戸外に出ない、照射時間の少地域) 4)病的因子 1 エストロゲン欠如(閉経期後、卵巣摘出後) 2 ステロイド長期投与 など |
4.骨折の予防
予防は低骨量や骨折の危険因子を明らかにし、予防可能な事項については早め
に対策をたてる。また適度な運動とバランスのよい食事を心がける。
1)運動療法としては、歩行が勧められる。
2)物理療法とは、鎮痛薬の使用を最小限にとどめる。
骨粗鬆症の予防
1)骨の状態を診る 1 骨の検診、骨塩量の測定 2 状態を知り早期発見、早期予防 その他 2)骨量減少の危険因子を除去する 1 カルシウム摂取を増やす 2 適度な運動 3 喫煙、過度の飲酒習慣の改善 4 日光浴 その他 3)転倒骨折の防止(前傾姿勢で歩行しないなど) 5)寝たきり防止 1 早期離床 2 長期臥床を避ける その他 |
5.大腿骨頸部骨折の予防
転倒機会の減少(体幹バランス・歩行能力の改善、杖・運動靴の使用)や衝撃
緩和の工夫(殿部プロテクターの使用)を心がける。食事療法では骨量維持(蛋
白質、カルシウム、マグネシウム、ビタミン類)と適正な体重をはかる。
設問9―4 骨粗鬆症患者のリハビリテーションについて述べよ |
【解 答】
骨粗鬆症のみでは機能障害はみられず、予防を目的とした歩行(朝夕30分、計8,000
歩程度)を行う。腰痛の発生時には硬いベッドで臥床させ、落ち着いた時点で腹筋
の筋力増強訓練を行う。骨折時には、その部位によって訓練方法を選択する。
歯磨き粉のフッ化物の種類です。
問題136 第94回 骨粗鬆症の高齢女性に対する日常生活の指導で正しいのはどれか。 1.ビタミンCを多く含んだ食品を摂る。 2.前傾姿勢で歩く。 3.やわらかいベッドで寝る。 4.筋力を増強する運動をする。 |
正答 4
【解 説】
1.骨粗鬆症の改善には、カルシウムの吸収を促進するビタミンD・ビタミンKが有効であるが、ビタミンCは有効ではない。
2.前傾姿勢で歩くと脊椎が弯曲し、円背の状態となる。
3.やわらかいベッドでは腰が沈むため、腰痛を誘発させる。
4.筋力を増強する運動をすると、足腰が鍛えられ転倒しにくくなる。また、運動によって骨量も増加する。
問題137 第92回 骨粗鬆症について誤っているのはどれか。 1.副腎皮質ホルモンの長期投与で起こる。 2.手関節の骨折が起きやすい。 3.血清カルシウム値は高値を示す。 4.活性型ビタミンDを治療に用いる。 |
正答 3
【解 説】
1.副腎皮質ホルモンの長期投与は、二次性骨粗鬆症を起こす。
2.骨粗鬆症では、脊椎の圧迫骨折、大腿骨頸部骨折のほかに、手関節(橈骨遠位骨端)の骨折が多く、転倒した際に手をついて手関節を骨折する。
3.骨粗鬆症では血清カルシウム値の増加はない。
4.活性型ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進するので、骨粗鬆症に有効である。
第98回 次の文を読み [問題138], [問題139], [問題140] に答えよ。 65歳の女性。身長157cm、体重56kg。長女夫婦と2人の孫と2階家屋一戸建てに住んでいる。本人の部屋は2階にある。長女夫婦が共働きのため、孫の幼稚園の送迎や世話などで毎日忙しく過ごしている。1か月前の市の健康診査で骨密度の検査を受けたところ精査うを勧められ、近医で骨粗鬆症と診断され、ビスホスホネート製剤の内服を開始した。
[問題138] 骨粗鬆症のタイプで最も考えられるのはどれか。 1.突発性 2.閉経後 3.廃用性 4.栄養性 [問題139] 転倒予防のための環境整備で優先度が高いのはどれか。 1.玄関の段差にスロープをつける。 2.廊下の中央に厚いじゅうたんを敷く。 3.トイレと風呂場に手すりを設置する。 4.階段と廊下に夜間の足元照明を設置する。 [問題140] 骨折のリスクを低減するための生活指導で適切なのはどれか。 1.幼稚園の送迎を控える。 2.服薬を確実に継続する。 3.毎日の縄跳びを始める。 4.体幹の回旋運動を積極的に行う。 5.ビタミンAを多く含む食品を積極的に摂取する。 |
正答 問題138 2、問題139 4、問題140 2
【解 説】
[問題138]
女性ホルモンには骨吸収抑制作用があり、65歳という年齢から、閉経後の女性が女性
ホルモンであるエストロゲンが減少することにより、骨形成速度よりも骨吸収速度が異
常に高まり、骨密度の減少することで起こる骨粗鬆症が最も考えられる。
[問題139]
1.孫の幼稚園の送迎や世話ができていて、2階に部屋がある日常生活や歩行等において支障がないため優先度は低い。
2.厚いじゅたんは足がひっかかりやすく不安定なため転倒につながる危険がある。
3.日常生活や歩行等に特に問題はないので優先度は低い。
4.毎日忙しく様子から過ごしている様子から、夜間の行動には特に注意が必要であり、夜間に足元が見えずに転倒し骨折などのリスクが高いため、夜間に足元を照らす照明を設置することは優先度が高い。
[問題140]
1.高齢者は運動量が減少し、骨の中の血液が酸性化してしまい、カルシウムが溶け出しやすくなる。孫の幼稚園の送迎などは、適度な運動となり骨粗鬆症の予防になる。
2.骨粗鬆症の治療として、食事療法(カルシウムの摂取や蛋白質を摂り過ぎない、加工食品を摂り過ぎない、塩分を摂り過ぎないなど)、生活習慣(運動、適度な日光浴をする、飲酒を控えるなど)、薬物療法、理学療法などがあるが、まずはきっちり薬物療法と食事療法等を守って行くことがよいので、生活指導では服薬を確実に継続することが大切である。
3.患者の年齢を考えると、適度な運動とはいえない。
4.
5.骨形成に関わるカルシウムを効率よく骨へ吸収することを助けるビタミンDを多く含む食品を積極的に摂取する。
B.骨折など
1.骨折の特徴
設問9−5 高齢者の骨折の特徴について述べよ |
【解 答】
1.病態
骨折は加齢に伴う骨の粗鬆化と関連し、これに転倒などの外力機転が働く。こ
れらの骨折は、海綿骨が豊富で皮質骨が菲薄化している脊椎椎体や長官骨の骨
端部に生じやすい。
2.脊椎椎体骨折
脊椎椎体骨折では疼痛がの程度は激烈で、体動が困難となりさまざまな日常生
活動作が著しく制限される。腰背部の疼痛と脊柱の変形(円背、亀背)、身長
の短縮がみられる。急性期には骨折部位の叩打痛や圧痛を認めるが、無症状の
例もある。エックス線上は、椎体の変形は扁平椎、楔状椎、魚椎変形に分類さ
れる。
3.大腿骨頸部骨折
大腿骨頸部骨折は、老年者では骨粗鬆症となっていることが多いので、つまず
いて転んだり、ベッドや椅子から落ちたりといった比較的軽微な外力でも骨折
を起こす。大腿骨頸部骨折はさらに内側骨折と外側骨折に分けられる。内側骨
折は、関節内の骨折で、骨折治癒に働く骨膜がない。このため保存的治療では
内側骨折部の骨癒合は望みがたく、観血的治療が原則で身体的負荷が大きく、
寝たきりの原因となる。症状は、立位や歩行は不可能になる。また患肢は軽度
屈曲、外転、外旋位をとる。診断は転倒の既往、股関節痛、起立歩行困難など
の臨床症状、股関節部のエックス線写真による。
4.橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)
橈骨遠位骨折は転倒で手掌を突き、手関節の伸展を強制されたために、手関節
より2〜3cmの橈骨部位に発生する骨折。これをコーレス骨折という。
5.上腕骨外科頸部骨折
50歳以降の成人では、男女比1対4で圧倒的に女性に多く発生する。
問題141 第100回 高齢者の転倒による骨折で最も多い部位はどれか。 1.尾 骨 2.肋 骨 3.頭蓋骨 4.大腿骨 5.肩甲骨 |
正答 4
【解 説】
高齢者の転倒による骨折で多いのは、1.大腿骨頸部骨折、2.上腕骨外科頸部骨折、3.上腕骨遠位端骨折の順である。
2.大腿骨頸部骨折
口臭と戦うための成分は何ですか
問題142 第93回 高齢者が転倒し、しりもちをついた。腰痛や下肢のしびれはないため経過観察となった。 観察で重要なのはどれか。 1.血圧の上昇 2.足背動脈の触知 3.失禁の有無 4.下肢の肢位 |
正答 4
【解 説】
1.高齢者は、しりもちをつくと大腿骨頸部骨折を起こすことが多い。本疾患は血圧の上昇との関連は少ない。
2.足背動脈の触知異常は膝関節より遠位の骨折でみられる。
3.失禁は、腰・仙骨の神経損傷でみられ。
4.骨折と同時に立位や歩行は不可能になる。また患肢は軽度屈曲、外転、外旋位など
下肢の肢位を確認する。
問題143 第98回 大腿骨頸部骨折のために人工骨頭置換術を行った。術後の腓骨神経麻痺予防のための看護で適切なのはどれか。 1.大腿四頭筋訓練を実施する。 2.患側下肢を外旋位に固定する。 3.下肢を間歇的に圧迫する器具を装着する。 4.患側下肢の母趾と第2趾間のしびれの有無を観察する。 |
正 答 4
【解 説】
1.下腿四頭筋訓練を行うのは、下肢の筋力低下を予防するためである。
2.患側下肢は回旋中間位に固定する。
3.下肢を間歇的に圧迫する器具を装着するのは、下肢の静脈血栓による肺血栓塞栓症による肺梗塞(エコノミークラス症候群)を予防するためである。
4.患側下肢の第1趾と2趾の間の足背(腓骨神経の知覚支配領域である)しびれの有無を1〜2時間おきに観察することが、術後の腓骨神経麻痺予防のために必要であ
る。
第99回 次の文を読み [問題144], [問題145], [問題146] に答えよ。 80歳の女性。自宅で長男との2人暮らし。明け方にトイレに行こうとして廊下でつまずき転倒し、左大腿骨頸部骨折と診断され内固定術を受けた。術後は順調に経過し、杖を使った歩行が安全にできるようになり1週間後の自宅退院が決定した。下肢の筋力および認知機能の低下はない。 [問題144] 再転倒予防のために確認すべき自宅の情報で優先度が高いのはどれか。 1.延べ床面積 2.調理台の高さ 3.廊下の床の状態 4.玄関の間口の広さ [問題145] 杖歩行は順調に上達しているが、転倒したことを「息子に迷惑をかけた。転んだことを思い出すとおそろしくて胸がドキドキするし、また転ぶんじゃないかと思うと不安だ」と話す。本人への言葉かけで適切なのはどれか。 1.「絶対に転倒してはいけませんよ」 2.「転びにくいような歩き方ができていますよ」 3.「骨折は治ったのだからもう安心して大丈夫ですよ」 4.「もうお年ですからなんでも息子さんに手伝って貰いましょう」 [問題146] 同居している息子は「もう一度転倒してしまったら大変なので、母が動くのは心 配だ」と話す。息子への対応で適切なのはどれか。 1.必要なものをすべて母親の周りに置く。 2.介護に慣れている息子がいつも歩行に付き添う。 3.安全に歩行していることを息子に見てもらう。 4.夜間はおむつを使用して転倒誘発の機会を低減する。 |
正答 問題144 3、問題145 2、問題146 3
【解 説】
[問題144]
1.一度老化でつまずき転倒しているので、足をとられやすくないかなど、廊下の床の状態を確認する必要がある。
[問題145]
1.「絶対にしてはいけない」という表現は患者の不安を増強するので適切ではない。2.不安を軽減させ、自信をつけさせる言葉かけであり適切である。
3.患者は再度転倒することにより骨折することに不安を感じているので、言葉かけのポイントがずれている。
4.息子に迷惑をかけと感じており、これ以上息子に手伝って貰うのは適切ではない。
[問題146]
1.必要なものをすべて周りに置くと、動かなくなってしまうので、ADLの低下につ
ながる。
2.息子が介護に慣れているという情報の記載はない。また、いつも歩行に付き添うこ
とは息子の介護負担を高める。
3.杖歩行が安全にできていることを理解してもらうことで、息子の不安を取り除くこ
とにつながるので適切である。
4.おむつの使用は患者の自尊心を傷つけるため、安易に使用するべきではない。
第95回 次の文を読み [問題147], [問題148], [問題149] に答えよ。 94歳の男性。身長150cm、体重38kg。家族と暮らしている。白内障のため視力低下があるが、食事はこぼしながらも自力で摂取していた。高度難聴のため家族は手掌上の指筆談で意思疎通を図っていた。軽度前立腺肥大あるが、排尿障害はない。 自宅でトイレへ行こうとしたときに転倒し、動けなくなったため入院した。右大腿骨頸部骨折と診断され、鋼線牽引3kgを開始した。 [問題147] 家族から牽引中の食事はどのようにするのかと質問があった。 説明で適切なのはどれか。 1.「上体は水平のまま、輸液で栄養を補給します」 2.「上体を40度ぐらい起こして、鼻からチューブで栄養の補給をします」 3.「上体を40度ぐらい起こして、介助で食べていただきます」 4.「寝たまま体を横に向けた姿勢で、ご自分で食べていただきます」 [問題148] 腰椎麻酔下で内固定法による骨接合術が行われた。術後ブラウン架台上で良肢位がとられた。手術当日の夜、点滴チューブを引っぱりながら「お侍さんが朝から俺の手足を縛って、大きな鐘を鳴らしている」と身体を動かしながら大声で言い続けている。 対応で最も適切なのはどれか。 1.今は夜なので静かに眠るよう説明した。 2.手足の紐を外したので安心するよう説明した。 3.鐘の音は難聴のために聞こえないことを説明した。 4.点滴静脈内注射の必要性を説明した。 [問題149] 退院時に大腿骨頸部骨折予防装具(hip protector)を使用することになった。 使用理由で最も考えにくいのはどれか。 1.低体重 2.筋力低下 3.白内障 4.前立腺肥大症 |
正答 問題147 3、 問題 148 2、 問題149 4
【解 説】
[問題147]
1.嚥下障害などで食事摂取ができない状態以外では輸液で栄養を補給する必要はない。
2.術前から食事摂取を自力していたので、経管栄養も必要ない。
3.食事のときは誤嚥性肺炎の予防のため上体を起こす必要があるが、下肢牽引をしているのでベッドアップは40度ぐらいにとどめる。自力で食事摂取できるところまで上体を起こすことは困難であるので、食事介助が必要である。
4.寝たまま食事を摂取すると、食物が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こす可能性がある。
膣唇の端が乾燥して白色である
[問題148]
1.患者はせん妄状態であり、幻覚をみて騒いでいるので、眠るように説明して無駄である。
2.患者は術後ブラウン架台に固定され、点滴を受けている拘束感により、せん妄状態に陥ったと考えられるため、「手足の紐を外したので安心である」と説明するだけで静かになることがある。
3.患者は鐘の音が聞こえているような幻覚に陥っているため、難聴で聞こえないことを説明しても無駄である。
4.患者はせん妄状態であり、判断能力が低下しているため、点滴静脈内注射の必要性を説明しても無駄である。
[問題149]
1.低体重では、股関節周囲の筋肉や皮下脂肪が少ないため、転倒時の股関節への衝撃を緩和できず、骨折の危険性が増すのでよい適応である。
2.筋力低下のため歩行が不安定となり転倒の原因となる。
3.白内障による視力の低下は転倒の原因となる。
4.軽度の前立腺肥大症があるが、転倒の原因とはならない。
3.膝関節症
問題150 第97回 70歳の女性。歩行時に膝関節の疼痛と熱感とが出現したため受診し、膝関節症と診断された。疼痛緩和に対する外来看護師の指導で適切なのはどれか。 1.「膝に温湿布をしましょう」 2.「積極的に膝を動かしましょう」 3.「痛みを我慢しないで早めに薬を飲みましょう」 4.「痛みがとれるまで横になっていましょう」 |
正答 3
【解 説】
1.疼痛と熱感がある急性期の痛みであり、冷却療法が有効である。
2.膝関節症の急性期では、関節軟骨に負担をかけないため、膝をなるべく動かさないよう安静にする。
3.痛みに対する鎮痛薬は、疼痛が悪化してから服用するより、疼痛が軽いうちに服用した方が効果的である。また、疼痛と熱感がある時期には、消炎薬を早めに使うと関節の疼痛をある程度防ぐことができる。
4.痛みがとれるまで横になっていると、廃用のため下肢の筋力が低下し、ADLが低下してしまうため、その都度可能な範囲で体を動かす。
4.腰痛
表6−2 腰痛の予防法
・腰への負担の少ない姿勢を心がける。そのため、椅子は適度の高さ(90度ルール)とする。 ・同一体位を長時間続けない。 ・腹筋や背筋の筋力を維持・強化する。 ・コルセットの使用は腰部の安静を保つには有用だが、 腹筋・背筋力を低下させる。 ・痛みが生じる姿勢を避けるため、物を拾うときは膝の屈伸運動を利用する。 ・痛みがある場合は、腰部の安静を保つことが基本と なる。 ・腰痛発生時には硬いベッドに臥床するほうが腰部の安静が保てる。 |
表6−3 老人の腰痛の分類
1.退行変性 2.炎症 3.腫瘍 4.代謝性、内分泌疾患 その他 | 腰椎椎間板症 変形性脊椎症 腰部脊柱管狭窄症 無分離脊椎すべり症 脊椎カリエスほか 転移性腫瘍 胃癌、前立腺癌、肺癌(男性) 乳癌、子宮癌、胃癌(女性) 多発性骨髄腫 閉経後、老人性骨粗鬆症 骨軟化症 |
問題151 第93回 腰部打撲で入院した高齢者。体動時に軽度の痛みがある。安静時には消失する。コルセットを装着して退院した。 腰痛増悪を予防するための生活指導で適切なのはどれか。 1.物を拾うときには膝を曲げる。 2.腰痛体操はコルセットがとれてから始める。 3.やわらかい布団に寝る。 4.低い椅子に座るようにする。 |
正答 1
【解 説】表6−2参照
1.物を拾うときは、前屈位となり上半身を支えるのに腰部に負担が加わるので、痛みが生じるような姿勢を避けるため、膝の屈伸運動を利用する。
2.コルセットの使用は腰部の安静を保つには有用だが、腹筋・背筋力を低下させるので、
急性期を過ぎたらコルセットがはずれるまで待つ必要はなく、腰痛体操を腰部への
負担を避けながら開始し筋力増強を図る。
3.腰痛発生時にはやわらかい布団より硬めの布団に臥床するほうが腰部の安静が保て
る。
4.低い椅子は座っている時や起立時に腰部の負担が強いので、椅子の高さは股関節、
膝関節、足関節が90度になるようなものを選び(90度ルール)、椅子に深く腰か
け背筋を伸ばす。
第92回 次の文を読み [問題152], [問題153], [問題154] に答えよ。 78歳の女性。1人暮らし。庭で雑草を取っていたとき、急に腰痛が起こり起立不能となり入院した。エックス線撮影で第1腰椎圧迫骨折と中等度の骨粗鬆症とが認められ、床上安静の指示が出された。腰痛のため寝返りを打つことも困難であったが、他人の世話を受けることに強い抵抗を示し「トイレに行ってはいけないのか」と尋ねてきた。 [問題152] 排尿の援助で適切でないのはどれか。 1.尿意の有無を確認しナースコールの使用法を説明した。 2.水分摂取を十分に行う必要があることを説明した。 3.ベッドサイドにポータブル便器を準備した。 4.膀胱が緊満していないのでしばらく様子を見た。 [問題153] 入院3日たっても便意を訴えなかった。尋ねると「したくない」と言うが、腹部に 触ると左下腹部に便の貯留と思われる塊が触れた。 対応で適切なのはどれか。 1.高圧浣腸を勧める。 2.便意が出現するまで待つ。 3.下剤の服用を勧める。 4.摘便を勧める。 [問題154] 離床開始後の骨折予防教育として適切なのはどれか。 1.体幹のひねり程度は差し支えない。 2.歩行時はコルセットを装着する。 3.裾の長い寝衣で下肢を保護する。 4.バランス感覚保持のため杖はなるべく使わない。 |
正答 問題152 3、 問題153 4、 問題154 2
【解 説】
[問題152]
1.腰椎圧迫骨折の急性期は安静臥床が原則であり、排泄はベッド上となるので、排尿のときにはナースコールを使用するよう説明する。
2.排尿時に他人の世話を受けるのに抵抗があり、水分摂取を控えがちである。脱水や便秘の予防のため、水分摂取を十分に行うよう説明する。
3.ベッドサイドにポータブル便器を用意すると、排泄のために勝手に移動しようとし
て腰椎圧迫骨折の悪化の危険がある。
4.膀胱が緊満していなければ様子を見てよい。
[問題153]
1.便秘で腸壁が緊張している状態で高圧浣腸を行うと、その圧で穿孔を起こす危険がある。
2.安静臥床していると腸管の蠕動運動が低下するため、便意が出現するまで待っても便秘が悪化するだけである。
3.腰痛で安静臥床状態では腹圧がかけられず、下剤を飲んでも便塊を排出することは
困難であるばかりでなく、宿便状態のときに下剤を服薬すると、腸管を刺激して蠕
動運動を高めるものの、便は閉塞状態でなかなか排出されないため、腹痛が出現す
る可能性が高い。
4.左下腹部に便の塊が触れるときは摘便を行うことで便秘が改善される。
[問題154]
1.離床直後に体幹をひねる動作は圧迫骨折部位に負担をかけ、骨折が悪化する危険がある。
2.歩行時はコルセットを装着することで腰椎への負担を軽減でき、骨折を予防できる。
3.裾の長い寝衣では、裾が足にからみつき転倒する危険がある。
4.腰痛と転倒の予防となるため、杖は使用すべきである。
第95回 次の文を読み [問題155], [問題156], [問題157] に答えよ。 76歳の女性。夫と2人暮らし。毎朝散歩し、週2回趣味の会に外出していた。散歩中にしりもちをつき、殿部から腰背部にかけて痛みがあったが放置していた。2週間前から痛みのため徐々に布団から1人で起き上がれなくなり、夫の介助でトイレに行くが、ふらつくようになった。5日前から、1日中臥床するようになった。市販の弁当と緑茶で食事を済ませていた。 夫の介助で受診し入院した。検査の結果、骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折と診断され、鎮痛薬とコルセットが処方された。
[問題155] 入院時のアセスメントで最も適切なのはどれか。 1.嚥下困難がある。 2.筋力の低下がある。 3.関節の強直がある。 4.痛みは我慢できる程度である。 [問題156] コルセットをつけて病室内を歩くようになった。 適切なのはどれか。 1.ゆっくりとした歩行を勧める。 2.痛みが強いときはきつく締め歩行する。 3.腹部を圧迫するので食事の量を控えめにする。 4.就寝中も装着するように勧める。 [問題157] 順調に経過し退院が決まった。 退院時の生活指導で適切なのはどれか。 1.肉類中心の食事を勧める。 2.布団は軟らかいものを使用する。 3.痛みが消失してもコルセットの使用を継続する。 4.散歩や趣味の会への外出を勧める。 |
正答 問題155 2、 問題156 1、 問題157 4
【解 説】
[問題155]
1.市販の弁当を摂取しており、嚥下困難はないと考えられる。
2.高齢者の安静は2〜3日であっても筋力の低下をまねくので、2週間前からの臥床
生活によって、筋力低下は起こる。
3.2週間程度の臥床生活で関節の強直をきたすことはない。
4.一日中臥床するほどの痛みであり、鎮痛薬が処方されており、我慢できる痛みでは
ない。
[問題156]
1.転倒しないように注意する必要がある。
2.痛みの強い時は安静にするか鎮痛薬を使用する。
3.食事は適正量をバランスよく摂取する。
4.就寝中はコルセットを外す。
[問題157]
1.骨粗鬆症があるのでカルシウムやビタミン類の多い、バランス良い食事摂取が必要
である。
2.腰痛発生の予防のため、適度に硬い布団に臥床する。
3.痛みが消失すればコルセットを使用する必要はない。
4.可能な範囲での散歩や趣味の会への外出は、適度な運動となり骨粗鬆症の進行防止
になるばかりでなく、気分をリラックスさせることができ、情緒面をも安定させる
といった効果があり、生活を活性化することで、ADLを高めることができる。
5.腰部脊柱管狭窄症
第100回 次の文を読み [問題158], [問題159], [問題160] に答えよ Aさん(80歳、女性)は、数年前から腰痛に悩まされ、腰部脊柱管狭窄症と診断されている。他に疾患はない。ADLは自立しているが、歩くと腰が痛むため活動は控えがちである。Aさんは夫と死別して1人で暮らしている。娘が1人いるが子育てのため、娘は毎日は手伝いに来られない。 [問題158] Aさんにみられるその他の症状として可能性が高いのはどれか。 1.突進歩行 2.間欠歩行 3.膝蓋腱反射の亢進 4.膝関節の可動域制限 [問題159] Aさんは腰痛が激しくなり、娘と一緒に受診した。 痛みを起こさないための指導で適切なのはどれか。 1.「腰をひねる運動が効果的です」 2.「しゃがむときは、腰を曲げずに膝を曲げましょう」 3.「物を持ち上げるときは、体から離して持ち上げましょう」 4.「ベッドから起きあがるときは、まずあお向けになりましょう」 [問題160] Aさんの腰痛は治療で改善し、外出や家事もできるようになった。Aさんの娘から「母ができるだけ自立して暮らし続けられるように、今なにをしたらよいでしょうか」と外来看護師に相談があった。 Aさんの娘への外来看護師の助言で適切なのはどれか。 1.「娘さんが、毎日様子を見に来られたらいかがですか」 2.「車椅子が使えるように住宅を改修してはいかがですか」 3.「Aさんがなるべく外で楽しめる機会を持つといいですよ」 4.「家政婦さんを雇って、家事を手伝ってもらうといいですよ」 |
正答 問題158 2、 問題159 2、 問題160 3
【解 説】
[問題158]
脊柱管狭窄症の症状の特徴として、しばらく歩くと、だんだん下肢が痺れたり重くなっ
たり、痛みがでたりして、歩くことが困難になるが、腰掛けたり、しゃがんだりして、
しばらく休むとまた歩けるようになるといった、間欠跛行という状態である。
[問題159]
1.腰をひねる運動は、腰に負担をかけ腰痛がさらに悪化する可能性がある。
2.しゃがむときは上半身を支えるのに腰部に負担が加わるため、これを避けるには膝
を曲げる。
3.物を持ち上げるときに、体から離すと腰部にかかる負担が増強する。
4.あお向けになると、ベッドから起きあがるときに、腰部に負担がかかるので、うつ
伏せになってから起きあがるようにする。
[問題160]
1.腰痛が改善し、外出や家事が自立してできるようになったので、子育てで忙しい娘
にこれ以上の負担を負わす必要はない。
2.1と同じ理由で車椅子を使う必要はない。
3.Aさんにとって外で楽しめる機会を持つと、気分転換となり活動性を高め、さらに
自立した生活を送れるようになると考えられる。
4.1と同じ理由で家政婦さんを雇う必要はない。
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